アルコール依存症

アルコール依存症

アルコール依存症とは

アルコール依存症はまだまだ誤解の多い病気です。
アルコール依存症は『性格の問題』や『ルーズな人がなる』ということではなく、誰でもなりうる身近な病気です。

依存症についてWHOは次のように提唱しています。

“精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める抑えがたい欲求が生じ、その刺激を追い求める行動が優位となり、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる精神的・身体的・行動的な状態”つまりアルコール依存症とは、お酒をやめたいと思っているにもかかわらず、つい飲みすぎてしまい、自分のこころや体の健康を損なったり、職業的・社会的な活動に障害を起こしたりする可能性がある病気です。
ちなみに平成25 年の厚生労働省の研究班によると、アルコール依存症の患者数は現在、日本国内で推計109 万人、その予備軍とも言える多量飲酒者は979 万人とも言われています。また平成20 年の患者調査では治療を受けている総患者は4 万4 千人といったデータも出ています。このように多くの人が飲酒に問題を抱えているにも関わらず、治療につながっている割合は55%に満たない状況です。

病気だからこそまずは医療機関等に相談することが大切です。

症状

アルコール依存症の症状は大きく3つに分けられます。すなわち、①精神依存、②身体依存、③耐性です。
① 精神依存とは、アルコールに対する病的に強い欲求を持つ状態です。そのために、コントロールのきかない飲酒をしてしまいます。例えば、お酒を飲むべきでない時にも飲んでしまう、飲み始めると飲む前に思っていた量より多く飲んでしまうなどです。アルコールがいつも体内にある状態が続くと、生体がその状態に適応した態勢をとるようになります。その後、アルコールが抜けてきた時に生体機能のバランスが崩れてしまって出てくるさまざまな症状のことを離脱症状といいます。
② 身体依存とは、飲酒を止めたり、飲酒量を減らしたりした時に離脱症状が出現する状態です。離脱症状の例としては、手のふるえ、多量の発汗、高血圧、不眠、イライラ感、不安感、けいれん発作、幻覚などがあります。
③ 耐性とは、いわゆる「お酒に強くなる」ことです。例えば、お酒を飲み始めた頃にはビール一杯で酔っていたが、最近ではその程度の飲酒量では全く酔わない、といった具合です。さらに、アルコール依存症は身体と心の様々な病気の原因となり得ます。肝炎や肝硬変、膵炎、生活習慣病、消化器系のがん、うつ病、不安障害、パニック障害などです。

治療

アルコール依存症は回復できる病気です。そのためには「断酒」を続けていくことが大切です。断酒とは、文字通りお酒を断つということです。この断酒の継続がアルコール依存症の治療ということになります。断酒をしていくためには、まず本人が断酒をしていこうと決意することが大切です。
しかしながら、本人自ら治療を求めないというのがアルコール依存症の1つの特徴です。嫌がる本人を家族など周囲の人が説得して治療へとつなげていくケースも少なくありません。以前は、断酒を決意していない人が医療機関を受診しても、医師から「断酒をする気になったら来てください」と言われることが多かったようです。しかし最近では、断酒を決意するまでには至っていない人が受診した場合、先ずは外来通院だけでも続けて、飲酒に関する話を重ねていくといったパターンが多いようです。中には節酒からスタートして断酒につながる人もいます。先ずは、気軽に専門機関に相談してみることが大切です。
その上で、断酒のための「3本柱」を使って断酒を継続していきます。
3本柱の1本目はアルコール依存症の専門外来に通院することです。2本目は抗酒薬(※1) 、3本目は自助グループ(※2)に通うことです。これに加えて、一定期間入院をして、断酒教育プログラムを受けるという方法もあります。

(※1) 断酒継続のための内服薬。肝臓でのアルコールの分解を阻害する働きがあり、この薬の内服後に飲酒するとひどい二日酔いの状態となります。この効果を利用して断酒継続のひとつの支えとします。
(※2) 断酒会やAA など。断酒の継続を目的とした、アルコール依存症当事者の市民団体です。

アルコール専門外来

アルコール専門外来では専門医が対応いたします。

診察日
火曜日・土曜日(祝日除く)

※ 初診は月曜・火曜・金曜・土曜の中で予約制となっております。

相談専用ダイヤル

まずはお電話でご相談ください。ご家族からのご相談もお受けしています。

電話:042-666-3526

受付時間/8:30~16:30

外来ARPアルコール・リハビリテーション・プログラム)

当院の外来では診療のほかにリハビリテーション・プログラムを実施しています。ここでは外来患者様が利用できるプログラムをご紹介します。参加に際しては、主治医にご相談ください。

外来グループワーク

アルコール依存症に関連するVTR を視聴し、毎週決まったテーマに沿ったフリートークを行います。依存症からの回復には、同じようにお酒の問題を抱えた方や回復している方と出会い、話を聞く・話をするということが大切だと言われています。
外来グループワークは、テーマに関する自身の体験を共有したり、他の参加者のお話を聞いたりすることにより、お互いの気持ちを理解し励ましあうことや、ストレス発散、病気に対する理解を深めることなどを目的としています。また、グループワークへの参加をきっかけに、自分自身の生き方や考え方を見つめ直すことができるかもしれません。
プログラムを運営するスタッフは看護師、精神保健福祉士、公認心理師など多職種で構成されており、様々な視点から参加者の方々のお話を伺い、回復のサポートを行っています。

アルコール・リハビリテーション・デイケア

断酒を継続し、精神的・身体的・社会的回復を支援する場所です。デイケアにてさまざまなプログラムに参加することで、生活リズムを保ちながら、自身の飲酒習慣を振り返ることができます。また、利用者同士が交流することで、回復に向けた新しいライフスタイルを掴んでいくこともできます。
当院のアルコール・リハビリテーション・デイケアでは週に1度、近隣の自助グループ(※1)や回復施設から回復者をお招きしてお話を伺うプログラムを実施しています。回復者との交流によって、自分らしい回復の姿を思い描くことや、自助グループへの繋がるきっかけづくりを目的としています。
アルコール依存症は回復可能な病気です。アルコール・リハビリテーション・デイケアは、安全で安心できる居場所として、利用者様がそれぞれに回復できる支援を多職種で行っています。

(※1)断酒会やAA など。断酒の継続を目的とした、アルコール依存症当事者の市民団体

入院アルコールリハビリプログラム

アルコールプログラムについて

駒木野病院では入院・外来・ご家族を対象にアルコール依存症治療のプログラムを行っています。

アルコール入院プログラムについて

ARP I期治療(ARP:Alcohol Rehabilitation Program)

アルコールによりダメージを受けた身体を、症状にあわせて治療していきます。体内からアルコールが抜ける際に、離脱症状が出る場合があります。I期治療は安全に体内からアルコールを抜き(解毒)、体調を整え、II期治療に備える期間です。

ARP II期治療

講義などを通し、アルコール依存症について正しく理解し、入院生活を通して自分らしさを取り戻していきます。ARP II期治療では様々な内容のプログラムを行っています。

講座

アルコール依存症という病気に関する内容について講義形式で実施しています。アルコール依存症の病理や用いられる薬、社会資源や心理面のサポートについて、医師や薬剤師といった専門職が講師となってプログラムを行っています。

グループワーク

これまでの体験を共有する時間です。ご自身の体験や考えを話し、他者の体験や考えを聞いていただく時間です。健康的な自尊心の回復が目的です。

運動プログラム

入院中の体力低下を予防し、アルコールにより低下した身体機能を取り戻すためのプログラムです。室内でヨガやストレッチ、筋力トレーニングを行います。また、高尾山の周辺をウォーキングすることもあります。専門の作業療法士がプログラムを担当します。

ワークブック

アルコール依存症からの回復のため、専用に作成されたテキストを用い、学習を行います。アルコール依存症の再発メカニズムを学び、再発予防のための手段や対処法について考えていきます。

自助グループ メッセージ

断酒会やAA(Alcoholic Anonymous)といった自助グループや、ダルクやマックといったリハビリ施設の方々にご協力いただき、病院内で例会、ミーティングを開催しています。様々な自助グループの方に、アルコール依存症からの回復のメッセージを届けてもらっています。これらのメッセージは①回復のイメージを呼び起こし、②お酒をやめていくという決意を思い起こし、③仲間と励ましあうといった役割があり、依存症の回復にとても有効とされています。

ARP II期終了後は…

ARP Ⅱ期終了後はARPリハビリ期への移行をおすすめしています。

入院中は病院という環境により「安全管理」されていました。強制的にお酒が飲めない環境にいたことになります。退院するということは「安全管理」を自分でしなくてはいけないということです。
退院してすぐは、解放感と飲酒するかもしれない緊張感がある時期と言えます。その時期を少しでも安心して過ごすために、退院して一定期間の間アルコール・リハビリテーション・デイケア(ARD)に参加して、自らの生活スタイルを作り上げていきましょう。ARDでは、そのために様々なプログラムを用意して、皆さんの回復をサポートしていきます。

入院アルコールリハビリプログラムのフロー図

院内自助グループ

駒木野懇談会

アルコール依存症当事者、およびそのご家族を含む酒害者が回復を目指す自助グループです。参加者相互の交流を通じて断酒意欲の向上及び酒害で苦しんでいる本人と家族の支援を行うことを目的としています(駒木野懇談会 会則より)

【主たる活動】
月一度(第三日曜日PM) のミーティング開催
【行事】
年2回実施(8月記念大会、12月クリスマス会)
【参加者】
アルコール依存症ご本人 *断酒会員/AA メンバー問いません*
・入院、通院患者様
・ご家族
・病院スタッフ
お酒の問題を抱えた方ならだれでも参加できます
【運営】
基本的には依存症当事者の自主運営となります

【こぼとけ】

当院で昭和47年より発刊を継続している機関紙で文字の自助グループです。
アルコール依存症に関する原稿を募集し掲載しています。

家族への支援

アルコール依存症を巡る問題には家族も少しずつ巻き込まれていきます。本人のために良かれと思ってやったことが、結果的に本人の飲酒を支えている、といったことがよくみられるのです。
例えば、飲酒が原因で起きたトラブルを、本人に代わって家族が後始末することで、本人は安心して飲酒を続けられるといった具合です。そのため、家族もアルコール依存症について理解することが大切です。それがアルコール依存症を抱える本人の断酒継続と大いに関わってくるのです。

家族プログラム

当院で行っている家族向けのプログラムです。

アルコール講習会

第Ⅰ部では、精神科医師によるアルコール依存症についての講義を行います。
アルコール依存症はどんな病気か、本人の回復と家族の健康のためにどのような対応が好ましいかについてお話しさせていただきます。
第Ⅱ部では、当院で開催している家族様対象のプログラム(家族会、CRAFT(クラフト))の紹介を行います。
まだアルコール専門医療につながっていない方、今後の受診について考えている方、アルコール依存症について勉強したい方どなたでも自由に参加できますので、お気軽に足をお運びください。

開催日時・料金
HPにて随時更新しておりますのでご確認ください

家族会

家族会は、アルコール依存症の方を抱える家族が集まり、お互いに近況や経験を共有する場所です。
「なぜこんなに辛いのか」「こんなときどうしたらいいのか」
ざっくばらんに様々なことを話したり、聞いたりすることができます。まずは家族会に来ていただき、ご家族の心の重荷を少しおろしてから、病気の知識やコミュニケーションスキルを獲得されることをおすすめしています。

開催日時
毎月第一土曜日13時30分~15時
HPにて開催場所についてのお知らせが掲載されますので直接会場にお越しください。
予約は必要ありません。当院に通院されていないご家族も参加できます。
料金
1人100円

アルメック相談

本人が病院受診できない場合、家族の対応方法や本人を病院につなげる方法、地域資源などについてお伝えします。

料金
1時間3300円

ご希望の方はアルメックまでお問い合わせください。

CRAFT(クラフト)

テキストに沿って進めるプログラムです。
「こんなに心配しているのに、なんでわかってくれないの?!」
そんな気持ちを効果的に伝える方法や暴力への対応、家族自身の生活の回復にむけたアプローチの仕方を学んでいきます。7~8回継続することをお勧めしています。

料金
1時間1100円×7~8回

ご希望の方はアルメックまでお問い合わせください。

アルコール依存症専門窓口【アルメック】

アルコール依存症の外来・入院治療にとどまらず、AA(Alcoholics Anonymous)・断酒会・マック・ダルク・駒木野懇談会などの当事者団体、行政、保健所、医療機関との連携を強化し、アルコール医療を担う地域の中核病院としてアルコール医療の底上げならびに精神保健の向上を目指しています。
アルコール治療の特徴としては、医師や関係部署担当者と連携しながら、アルメック アルコール担当部門 にいる専門スタッフが、入院前から入院治療、リハビリ、回復期までを継続的に一貫して関わるところにあります。このような体制を作ることで切れ目のないかかわりができ、相談のしやすさや早期の対応が可能となり、ご本人やご家族の治療と回復を支えられると考えています。入院中はアルコール専門スタッフ 看護師、精神保健福祉士 と多職種で構成されるサポートスタッフで関わります。またアルコールデイケアやご家族を含めたご利用者向けに家族相談や教育プログラムの提供を行っています。地域に向けては家族教室や講演会など予防・啓発活動にも力を入れています。また企業への節酒教育なども行っています。
アルコールには依存性があり、習慣的にお酒を飲み続けることで誰もがアルコール依存症になる可能性があります。アルコール依存症になると飲酒をコントロールすることが困難になり、そしてお酒の問題にうすうす気づいていても周囲に助けを求めることなく進行していきます。アルコール依存症の回復には、専門治療と自助グループへの参加が大切になります。
お酒がなかなか止められない、アルコールの専門医療を受けたい、家族としてどのように対応したら良いかわからない、アルコール専門治療につなげたいけど本人が望まない等アルコール関連のことでお困りの方々の治療と回復に寄与していきたいと思っております。
まずは電話でのお問い合わせをお待ちしております。

相談専用ダイヤル

まずはお電話でご相談ください。ご家族からのご相談もお受けしています。

042-666-3526

受付時間/8:30~16:30

リンク

東京断酒新生会:https://www.tokyo-danshu.or.jp/
久里浜医療センター:https://kurihama.hosp.go.jp/
家族の回復ステップ12:http://frstep12.info/
AA 関東甲信越セントラルオフィス:http://aa-kkse.net/