季刊誌 駒木野 No.174
当院で毎年美しい花を咲かせる桜。職員や患者様から親しまれています。
新年度を迎えて
院 長 菊本 弘次
平成26年度は、診療報酬改定および精神保健福祉法改正という新たな枠組みが示されました。当院では事業計画の柱として、精神科救急病棟の複数化とこまぎの訪問看護ステーション「天馬」の立ち上げを掲げて事業展開をしてきました。年度末には当法人理事長であり、まさに大黒柱である加藤元一郎先生の急逝という事態を迎えました。衝撃はなお癒えることはないですが、病院職員全体の頑張りと努力により初期の目的はほぼ達成できました。
満開の桜が高尾の山々を彩る中、平成27年度の駒木野病院はスタートしました。今年度は22名の新入職員を迎えました。グリーンホールでの入職式は今年度で3回目ですが、ホールからの眺望は徐々にですが確実に変化しています。当初はお隣の高尾駒木野庭園を俯瞰するような景色でしたが、現在は庭園の竹林や生垣はその背丈を伸ばし庭園を覆っています。日々の見守りや手入れがあってこそ庭園は成立し木々も成長します。駒木野病院では、きちんと人を育て活かしているでしょうか。
社会保障改革は高齢化社会への対応策ですが、絶対的労働力減少に対する解決策ではありません。一民間病院である駒木野病院が解決手段を握っているとは言いませんが、貢献手段はあります。職員は病院固有の財産ではなく、社会全体の貴重な財産を一時的にお預かりしているとすれば、人材育成は当然の責務です。当院は精神科専門医療に特化し高いコンプライアンスを求める病院であり、職種を問わず個々の責務は重いですが、大げさでなく精神科領域で学べないものはないと自負しています。研修・人材配置そしてストレス対策など人材育成は簡単ではないですが、「早い段階で一端でも良いから精神科医療の面白さや醍醐味を体感して欲しい」と願っています。
当院において、平成24年度からは障害者雇用プロジェクトを立ち上げ、「送り手・支え手」という立場から「受け手」としての役割も担い一定の成果をあげています。私自身は、職場のメンタルヘルス対策やうつ病リワークの成否の鍵はライフワークバランスにあり、ひな型は精神障害者雇用にあると考えます。将来の予測は混沌としていますが、駒木野病院の使命を前向きに実行していきましょう。
4月の雪には閉口させられましたが、高尾ではその分だけ(根拠はありませんが)桜が長持ちしているようです。すべての人にとって平成27年度が良い年度であることを祈念しています。
主な活動実績(2015.1-3)
1月:多摩立川保健所で自殺予防とうつの講演、八王子市社会福祉協議会ボランティアセンター主催の精神保健福祉ボランティア講座の医学講座にて講演八王子市高齢者あんしん相談センター共催活動(キャラバン隊)にて市内のグループホーム訪問、ファミリープログラム、友楽会、サポートプログラムの開催、退院支援委員会学習会(リカバリーセンター転) 、駒木野カンファレンス(倫理委員会主催:倫理~今一度倫理を再考しましょう~)
2月:落合町会で健康教室:当院長谷川PTと高齢者あんしん相談センター高尾斉藤さんがコラボ企画、地域活動支援センターぷらすかわせみで「ちょっと得するミニ講座~医療保護入院について~」 相川PSWが講師、清瀬わかば会の職員研修:「てんかんについて」 、出張相談会、病院見学会、いっぽの会茶話会、ファミリープログラム、友遊会の開催、駒木野カンファレンス(感染症対策:プレゼンター 志水先生)
3月:東京都北多摩西部保健医療圏地域精神保健福祉連絡協議会・地域精神保健福祉連携専門部会(多摩立川保健所)「退院支援の現状と課題」を議題に病院における退院支援についてSSK山口と竹内PSWで当院の報告 、退院促進懇話会、出張相談会医師相談 、訪問看護ステーション対象の病院見学会、いっぽの会茶話会、友遊会、サポートプログラムの開催、SSTファーストレベル研修会 、病院・友遊会主催講演会( もっと知りたいリカバリーと当事者の力 ピアサポートとリカバリー:NPO法人地域精神保健福祉機構コンボ共同代表の宇田川健氏)、駒木野カンファレンス(行動制限最小化研修)
新しい仲間を迎えて
平成27年度入職式 ~Fresher’s Interview~
副院長・看護部長 宮﨑 弘光
新入職の皆さん、入職おめでとうございます。駒木野病院へようこそ。新社会人として前途洋々の希望を持って、新たな人生の第一歩を踏み出されたことと思います。皆さんを心より祝福し歓迎いたします。
組織は、若い力が加わることで、活性化し、進化し、成長していくものです。皆さんの入職は、当院にとって欠かすことのできない大切な財産です。どうか、緊張感と希望にあふれた初心を忘れずたくさんの事を学び、様々なことに挑戦し、当院の利用者や駒木野病院に貢献していただきたいと思っております。
病院(組織)は一人一人の価値の集合体です。一人一人がもたらす貢献が積み重なって大きな価値となっていくものです。皆さんが社会人、専門職業人としての責任ある行動を主体的に起こすことを望んでいます。新人だからといって臆することはありません。若いことは素晴らしいことです。自分が駒木野病院の医療を支えている、新たな価値を創造していくという心がまえで、持ち前の行動力と自由な発想で失敗を恐れることなく、伸び伸びとチャレンジしてほしいと思います。
これから皆さんをいろいろな困難が待ち受けています。困難に立ち向かう強い心を持ち、真摯に誠実に行動すれば必ず乗り越えられます。乗り越えた先にしか見えないことがあります。
最後に、自分が選んだ職業を好きになって下さい。駒木野病院を選んだのだから好きになって下さい。好きになる努力をしてください。自分に向いている仕事、職場を探すのではなく、好きになる努力が最も大切です。
1.院長祝辞と講話 2.辞令交付式 3.新人歓迎ボーリング大会 4.新人研修 5.新人職員と幹部職員にて
Fresher’s Interview
看護師 芦澤 博実
四日間の新任者研修では、本当に貴重なお話を聞けたと思っています。ありがとうございました。
研修の中で特に印象に残った言葉があります。「退職するその日まで、自信ない」を目指すという副部長の言葉です。看護に終わりはなく、変化し続けるものであるため、今行われている看護が完璧である保障はないのだそうです。終わりのないことを追い求め続ける、何だかすごいところに来てしまったと感じました。いくらやっても完璧にはたどり着かない、報われないように感じますが、だからこそ看護は成長し続ける、そして、私たち看護師も成長し続けることができるのだと考えます。時には、立ち止まったり逃げたくなることがあると思いますが、周りの人に助けてもらいながら看護師として成長し続けていける人間でありたいです。
看護師 杉原 里佳
入職式を終えて、新入職者研修の前半を終了した今、大学生のときよりも多くのことを学ぶことができたと実感しています。学生という立場から社会人、専門職業人という立場になり、責任感を持った行動や自分が求められる力を発揮する必要性を強く感じました。看護師として自分が患者様のために心のこもった医療を提供するための根幹も学ぶことができたと思います。専門職である限り学び続け、患者様のために知識を身に付けること、理論を有効に用いて看護過程を展開し、より良いケアができるようにしていきたいと思いました。心のこもった医療を患者様に提供するために、まずは社会人としての礼儀やマナーを身に付け、信頼される人間になりたいと思いました。これからも研修で学んだことを大切にして、看護職に誇りを持った先輩たちに追いつけるように頑張りたいです。
看護師 中野 宏隆
私は、大学を卒業して初めて社会人として働き始めます。病院での業務の経験はなく、知識も不十分で、このまま病棟に配属されてもよいのだろうかという不安がありました。しかし、ユニフォームに袖を通せば周りからは看護師として見られますし、組織の一員になります。研修の中で精神科の歴史や看護理論、疾患、薬物療法、家族看護、医療安全などについて学習をしてきました。これらのなかには、これまで学生の時に学んだことのある内容も多くありました。しかし、その多くが自分の知識として定着していないことを実感しました。まずは、不十分な知識を定着させること、また新しい知識を得ていくことが私のできる役割の一つであると思いました。また、新人らしい視点で患者さんやスタッフと接し、気づいたことがあればそれを積極的に発信していきたいと思います。
精神保健福祉士 加藤 伸江
3月の研修を経て4月に入職し、多くの迷惑をかけてしまっていますが、職員の方が日々優しく親切に指導して下さり、感謝の気持ちでいっぱいです。職員の方に指導を頂くたびに、早く仕事を覚えて、貢献したいという気持ちが湧き、モチベーションに繋がっていると思います。また、職場で行われていることのレベルの高さにも驚きました。仕事の事務的な部分の内容はもちろんですが、感覚的な専門職の支援も展開されていて、単に仕事を覚えるだけではなく、専門職として求められている部分にも応えられるようにしていかないといけないと感じました。毎日、自分の力不足を痛感し、焦りも感じますが、一つ一つのことに丁寧に対応していきたいと考えています。デイケアではメンバーの皆さんがとても私を気遣ってくださっていて、有難い気持ちです。これからも迷惑をたくさんかけてしまうと思いますが、失敗をバネに頑張りたいです。早く成長できるよう努力してまいります。
加藤先生を偲んで
理事 事務長 神 マチ
故人加藤元一郎理事長(この先は加藤先生)が医療法人財団青溪会に望まれた事は「効率化と情熱がブレンドされた良質な医療」を目指す事でした。効率化では目まぐるしく変化する精神医療への対応策、情熱は全職員が患者さんの立場に徹底的に立つ「駒木野魂」を意味しています。平成13年に発刊された駒木野病院30周年記念誌をお読みいただければ、加藤先生の真髄を知る事ができると思います。
加藤先生が当法人の医局に入局されたのは昭和56年でした。以後、平成5年当法人としては異例の38歳の若さで理事に就任されました。当時の理事長が法人の将来を見据えた采配であったと聞いております。平成21年、理事長に就任される前後から、A棟の建て替えと病棟再編に着手し、児童精神科病棟やクラスター部門を先導し、また院内に精神医学・行動科学研究所を開設される等強いリーダーシップで新しい精神科医療のスタイルを築かれました。加藤先生は精神科医として実に著名な先生ですが、経営者としても驚くべきアビリティーで当法人の経営の安定化を図り、更なる発展を描いておられたに違いありません。
加藤先生のあの豪快さと優しさは一人一人の心に深く刻まれ残り続けることでしょう。今はただ心から冥福をお祈り申し上げます。
平成26年度 駒木野病院 医療実績
平成26年度の医療実績としましては、入院数1051件及び退院数1065件となり、前年度より増加しました。平均在院日数は154日と在院期間の短期化が継続しています。また外来では、前年度に比べて患者数は大きく増加し、新規患者数においても、診療機能の拡大に合わせて増加しています。新規患者の疾病分類のグラフでは、F4:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害とF0:認知症及び器質性精神障害で全体の44%を占めており、当院の診療機能の特徴を表しています。