季刊誌 駒木野 No.179
青溪会の地域構想と準備としての組織改編
理事長 菊本 弘次
駒木野病院から望む山々も鮮やかな紅葉に彩られました。最近、季節感が薄れているとはいえ、高尾の地では豊かな自然が季節の移り変わりを体感させてくれます。
駒木野病院では昨年度から将来検討委員会を立ち上げて参りました。議論を進める中で、今年度、より丁寧に、より迅速に地域を、そして障がい者をサポートできる地域拠点作りを目指すこととしました。今さらという声もありますが、医療資源も福祉資源も豊かな八王子市において地域資源とは連携し協働することを旨とし、駒木野病院は精神科医療機関に特化して歩んで参りました。それでも、「待っているだけで良いのか、送り出すだけで良いのか」という懸念は、私自身も含めて少なからぬ職員が抱いていました。2年前、駒木野病院は高尾駅と病院の間に位置するこまぎの訪問看護ステーション天馬を開設しました。病院から、わずか1㎞と離れていない天馬から届くのは地域と病院との温度差です。地域ニーズは法人運営理念の大きな柱です。地域の当事者感覚を取り戻すためには、地域に乗り出すサービス、地域感覚を地域において受け止める体制が不可欠と痛感させられました。目指す拠点作りには残念ながら少し時間がかかりそうですが、駒木野病院の強みを活かせればと考えます。まずは、グループホーム運営と在宅診療に取り組みたいと考えます。
さて、本年8月、東京都における地域医療構想が策定され、9月からは第7次医療法改正が施行されました。近年、我が国は病院、病床の機能分化を強力に推し進めてきました。そのうえで地域における医療機能を過不足なく?再構成を求めたのが地域医療構想であり、今回の医療法改正は、再構成された枠組みの中で各々の機能が円滑に連携するための仕組みとして創設したのが地域医療連携法人でしょう。近い将来、地域包括ケアを一手に担う法人が出現するのか、また、それが地域住民に本当に有益なのか、現時点で見通すことは困難です。
医療法改正は医療法人のガバナンス強化も求めています。青溪会においても法人としての管理運営機能の強化は必須となっています。本年10月1日当法人は組織再編を行い、新たに法人事務局、天馬を含む地域生活支援センターおよび在宅診療部を立ち上げることとしました。地域拠点作りの推進役となることが喫緊の課題ですが、将来にわたる法人、駒木野病院の機能充実を担ってくれると期待しています。また、組織再編発表と同日に、田 亮介診療部長が副院長に就任されました。その活躍ぶりからすれば当然の就任ではあります。新副院長ともども、これからの駒木野病院に期待してください。
主なSSK地域活動実績(2016.7-9)
7月
【地域連携】
7-8月は恒例の夏の連携訪問を実施。経営企画室を中心に事務、看護、PSW、SSKなどが2人一組となってご挨拶やご意見伺いに多摩や近県 地域を回りました。その訪問施設数はおよそ150件です。
28日(木)病院見学会(AL紹介含む)
【本人・家族支援】
1日(金)いっぽの会茶話会(女性限定)
9日(土)ファミリープログラム➂
15日(金)いっぽの会茶話会
16日(土)友遊会(ハッピーフルーツの方に来ていただきみんなでブローチづくりを楽しみました)
22日(金)元気のひろば
23日(土)サポートグループ
【その他】
地域の就労継続B型事業所「しあわせのたねのたねカフェ」にお邪魔したり、八王子ワークセンター、かてかてショップに顔を出したりしてきました。
8月
【地域連携】
多摩草むらの会家族会講演会「訪問看護について」円 佐野氏講演(山口)
26日(金)多摩在宅医療・介護研究会(院長他)
29日(月)包括支援センター医師相談(森山Dr)
【本人・家族支援】
5日(金)いっぽの会茶話会(レディスデイ)
13日(土)ファミリープログラム➃
19日(金)いっぽの会茶話会
26日(金)元気のひろば
【その他】
15日(月)こまぎの訪問看護ステーション天馬と病院の連絡会
19日(金)いっぽの会と振り返りの会
9月
【地域連携】
5日(月)(社福)翔の会病院見学研修(障害者雇用関連)
14日(水)包括支援センターとのキャラバン隊
17日(土)サンクラブ多摩(家族会) 講演会:田Dr「地域で安心して暮らしていくために」
21日(水)包括支援センター医師相談(田Dr)
【本人・家族支援】
2日(金)いっぽの会茶話会
10日(土)ファミリープログラム➄
16日(金)いっぽの会茶話会
24日(土)サポートグループ
25日(日)友遊会
【その他】
ピア・カウンセラー養成講座の病院実習(7日)PSWの方々と一緒に受け入れ協力をしました。
こまぎのフェスティバル2016開催
こころのバリアフリーを考える
2016年9月25日(日)
主催:駒木野病院/共催︓高尾駒木野庭園指定管理者 駒木野庭園アーツ
後援:八王子市/八王子市教育委員会/浅川地区町会連合会/浅川地区住民協議会/浅川地区社会福祉協議会
こまぎのフェスティバル 実行委員長 二瓶 圭一
今年も、多くの皆様のご協力とご支援をいただき、「こまぎのフェスティバル2016」を無事に開催する事ができました。心より感謝申し上げます。
今回のイベントでは、テーマを「こころのバリアフリーを考える」としました。基調講演会では、特別企画としてNPO法人多摩草むらの会 代表理事の風間美代子氏をお招きし、「精神障害者が生きて行くという事」をテーマにお話をいただき、当院副院長の田亮介からは「“お互い様”で支え合える社会を目指して~精神科医の立場からこころのバリアフリーを考える~」をテーマに会場の皆様にお話をさせていただきました。併せて、家族会企画として、ご家族や当事者によるコーラスやカフェなど多くの家族会の皆様にお集まりいただき、職員と素晴らしい交流ができました。
また新たにスポーツイベントを企画し、当院がスポンサーをさせて頂いている、プロバスケットボールチーム「東京八王子トレインズ」によるイベントを開催し、選手の皆さんとシュートゲームやミニゲームを行い、沢山の子どもたちの笑顔があふれていました。また、八王子市主催の「子ども広場」の開催や、高齢者あんしん相談センター高尾の皆さんによる、健康体操「ふまねっと」の実演など、子どもから高齢者まで幅広く楽しめるイベントになったことを職員一同心より感謝しております。
また、当法人のスタッフや当研究所の研究員、地域の様々な機関によるブースの開設や、様々なステージイベントやミニイベント、屋台、福祉事業所による販売、体験コーナー、家族会や学生ボランティアの参加など、地域から53団体のご参加をいただき、様々な交流をさせて頂きました。来場者数も3,000人を超え沢山の市民の皆様にご来場いただけたことを心より嬉しく感じております。
素晴らしい高尾の自然の中で、皆様からのご協力を頂きながら、会場を訪れた皆様が楽しく一日を共に過ごせたことに、職員一同大変嬉しく感じております。今後も、イベントを通じて当院の医療活動に寄り添える活動を継続できればと考えております。来年も、イベントで沢山の笑顔に出会えることを今から楽しみにしております。皆様ありがとうございました。
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協力・参加団体:株式会社エームサービス/シンクメディア/北野調剤薬局高尾店/ナガイレーベン株式会社/株式会社マキ・コーポレーションスタジオアン/アウディオペーデアンサンブル/NPO法人ポケットパーク/こまぎの訪問看護ステーション天馬/高齢者あんしん相談センター高尾/NPO法人多摩在宅支援センター円/地域生活支援センターあくせす/一般社団法人WING-NETWORK多機能型事業所すぺいろ/NPO法人多摩草むらの会/大道芸タケト/ゲンキダJ/東京八王子トレインズ/ファニー・フェローズ・ジャズオーケストラ/アロハ・アーヌエヌエ/株式会社ウェルサポート(ヤマザキYショップ)/合同会社TONTON/田中農園/菱山ファーム/NPO法人わかくさ福祉会ジネス/ディープフォレスト高尾店/NPO法人八王子ワークセンターかてかて/NPO法人ひざしひろば/NPO法人あるがハッピーフルーツ/フローガーデン・ソラ 一般社団法人相模原ダルク/株式会社カオスエージェンシー/多摩総合精神保健福祉センター/子ども家庭支援センター/八王子市社会福祉協議会/創価大学 大妻女子大学 /八王子市立八王子看護専門学校/八王子精神保健福祉ボランティアの会(いっぽの会)/わかくさ家族の会/多摩草むらの会家族会/立川麦の会 友遊会/SUNSUNパパさんの会/特定非営利活動法人チェロ・コンサートコミュニティー /JR高尾駅/ねこのしっぽ/タウンニュース/稲葉(音響)(敬称略・順不同)
家族会イベント ~家族会カフェ~
サービスステーション駒木野 室長 山口多希代
昨年、6つの家族会の方々に病院見学をしていただきました。そのことがきっかけになったと思いますが、今年は家族の方々と一緒に何かできないかということになりまして、3つの家族会と何度も打ち合わせを重ねて「いこいの広場」ができました。くつろぎのスペースと感動のコーラス。おしゃべりしたり、ステージの皆さんと一緒に歌を歌ったりも大歓迎!本当にあたたかな人とパワーに包まれた空間でした。たくさんの笑顔と歌声があふれ、スタッフからも参加者からも「元気をもらえた」「来てよかった」という声を戴きました。これからも、こんな企画ができるといいなと思いました。
こまぎのフェスティバル 高尾駒木野庭園共催イベント
高尾駒木野庭園では、NPO法人チェロ・コンサートコミュニティーの皆様によるチェロ体験とコンサートを開催いたしました。参加された方々は、素晴らしい日本庭園を眺めながらチェロの音色に包まれる穏やかな時間を過ごされました。
第2回 精神医学・行動科学研究所 活動発表会
日時:2016.11.4 17:00~18:30 場所:駒木野病院グリーンホール
精神医学・行動科学研究所 所長 田 亮介
昨年に引き続き、当法人の精神医学・行動科学研究所の活動発表会が開催されました。梅田聡副所長による「研究所の活動概要報告」から始まり、前田貴記先生から「統合失調症における自我障害の神経基盤~診断と治療を目指して~」、寺澤悠理先生から「脳と身体からみる不安」、菊地俊暁先生から「うつ病って何だろう?~いろんな角度からみた気分障害~」というタイトルでご報告いただきました。いずれの先生方も、本邦のそれぞれの研究分野におけるリーダー的な存在の方たちばかりで、学会のシンポジウムでも実現が困難と思われる豪華な顔ぶれでした。専門的な部分もあるため、研究のすべてを理解することは困難かと思いますが、日頃我々が接している患者さん、もっと言えば「人間」を別の角度から理解していく手助けにはなったのではないかと感じました。
今回の発表をお聞きいただいてお分かりのように、新しい研究でありながらも、楽しく、そして最終的には精神疾患の治療・リハビリに結び付けていきたいという意欲的ものばかりだったと思います。地道にコツコツと積み上げていかなければならない大変なところもある一方で、結果については皆でディスカッションしたり共有できる喜び・楽しみがあり、「部活」のような雰囲気をもっています。また研究を通して、様々な人材が当法人にご参集いただけることも大きな魅力だと感じています。民間の精神科病院としてまずは臨床が中心となりますが、日頃の臨床疑問から発する当院ならではの研究や、臨床に還元できる研究を目指して取り組んでいきたいと考えております。
今後とも、各研究におけるコントロール群としての職員のご参加や、患者様の研究へのリクルートなどでお世話になることも多いと思います。前記のようなミッション・意気込みをご理解いただき、目標は大きく、「駒木野から世界へ」を意識しながら研究を進めていきたいと思っておりますので、引き続きのご支援ご協力をお願い申し上げます。
RAN伴八王子に参加して
こまぎの訪問看護ステーション天馬 青木裕理
駒木野病院を出発後、参加者のおばあちゃんの手を取り、車椅子の方と一緒にゆっくり2時間の道のりを歩きました。介護と聞くと暗い気持ちになりがちですが、人生の先輩を敬い、一緒に過ごす事で温かな気持ちを育めたらどんなに素敵だろうと思います。認知症を特別視せず、お互いに見守り声をかけ合える地域づくりを実現したいというRUN伴の目的を実感し、実際の活動に参加でき貴重な体験となりました。
業績集発刊によせて
当法人では、一年ごとの業績をまとめるべく業績集の発刊を始めました。主な内容としては病院や訪問看護ステーションの基本的な情報や様々な活動報告、各種統計に始まり、職員が年間を通して活動した実績を学術発表、講演、論文、書籍のカテゴリーでまとめています。また、患者満足度調査の報告や、各年度に発行された「こぼとけ」及び「季刊誌駒木野」を資料として巻末にまとめております。今後も、当法人の活動の軌跡として業績集の発刊をして参ります。
文責:二瓶圭一