季刊誌 駒木野 No.183
平成30年度医療法人財団青溪会のこれからの展望について
理事長 菊本 弘次
平成30年4月2日、駒木野病院では21名の新入職者を迎えて新しい年度をスタートしました。当日、都心の桜はすでに盛りを過ぎていましたが、小仏川沿いの桜は満開を迎え駒木野病院から望む高尾の春景色はまさに絶景でした。
本年度は、診療報酬、介護報酬ならびに福祉サービスのトリプル改定が実施されました。個人的には、正直どこか違和感も覚える改定ですが、駒木野病院にとっても精神科医療全般に少なからぬ影響を及ぼすことは確かであり、前向きに対応していくしかありません。
診療報酬は基本的に全国一律ですが、精神疾患の大きな特徴は、その人の置かれた状況や治療環境によって治療効果や回復のあり方に大きな影響を受けることにあります。精神科病院における治療環境を決める最大の構成要素は言うまでもなく人であり、駒木野病院では職員個々の研鑽とチームワークを大切にしてきました。ただし、精神障がい者が本来的に生きていく場所は病院の中にではなく地域にあります。
今年度、青溪会は、今まで以上に積極的に地域にコミットしていく決断をしました。4年前に開設したこまぎの訪問看護ステーション天馬は増え続けるニーズに対応するために二つ目の活動拠点を、昨年度に誕生したグループホーム駒里は、ユニット増を図りショートステイ事業も可能とする拠点を新設します。更には地域で暮らす利用者の種々の相談に応じより豊かな生き方を応援するために相談支援事業所を開設することとしました。
現在の社会情勢のなか、駒木野病院を含めて青溪会のかじ取りは決して容易ではありません。しかし、青溪会には、利用者のもっと喜ぶ顔を見たいと心から願い、誇りと勇気をもって取り組む職員にあふれています。従来から駒木野病院は駒木野らしい地域貢献のありかたを模索してきましたが、今年度は法人全体が地域社会で有機的に機能するための節目となります。職員のみならず地域の多くの皆様に、大いなる期待と応援を頂くことを切に願っております。
平成30年度 医療法人財団青溪会 入職式
平成30年度医療法人財団青溪会入職式が4月2日に行われました。今年度の入職職員としては、医師4名、看護師14名、作業療法士1名、精神保健福祉士1名、キャリア採用の薬剤師1名、計21名が医療法人財団青溪会の職員として採用されました。
特集:駒木野病院 禁煙化に向けた取り組みについて
WHO 受動喫煙防止のための政府勧告 抜粋
- 完全禁煙を実施し、汚染物質であるタバコ煙を完全に除去すること。換気と分煙で受動喫煙をなくすことは出来ない。
- すべての屋内の職場と公衆の集まる場の完全禁煙化を義務付ける法律を作り施行すること。
- 法律を周知させ、履行を徹底させること。法律を作るだけでは十分とは言えない。
- 職場を禁煙にする法律が出来ると、家庭を禁煙にしようという市民が増えることを見越し、家庭の受動喫煙をなくす教育的対策を実施すること。
敷地内禁煙化プロジェクトチーム 柳橋 達彦
喫煙によって世界で毎年700万人が死亡し、そのうち受動喫煙によって89万人が死亡しているそうです。本邦でも受動喫煙によって毎年1.5万人が死亡していると厚生労働省が試算しています。本邦の受動喫煙対策はWHOの4段階分類で「最低ランク」と立ち遅れています。東京オリンピックを控え、ようやく罰則規定を含めた健康増進法の改正案が平成30年3月9日国会に提出されました。改正案によると学校、病院、行政機関などの公共施設は、原則禁煙が求められます。優良病院の基準である医療機能評価機構でも全館禁煙であることが評価対象となっており、多くの病院がすでに禁煙化に動き出しています。
一方、精神科病院における受動喫煙対策は、ガラパゴス化の状態で取り残されていました。精神疾患罹患者の喫煙率は、一般人口よりも高く、特に長期入院と喫煙は深い関係にあります。昨年度の調査ではE2病棟の喫煙率は58.1%、E3は39.5%、E4は51.1%、B2は15.0%でした。喫煙はコミュニケーションやコーピング手段の一つという側面もあり、精神科医療にとって、百害あって一利なしと言い切れないところが禁煙化を難しくしていました。
これまでも安全衛生委員会には、しばしば受動喫煙対策を求める意見が挙がっていました。喫煙の一利をことさらに強調し、利用者および職員の健康被害を看過することはできないと考えた安全衛生委員会を中心に、敷地内禁煙化プロジェクトチームが発足しました。チーム内で議論する中、多くのハードルがあることが明らかになりました。喫煙者である利用者への影響のみならず、喫煙者である職員のモチベーション、経営への影響、近隣地域への影響等、多岐に渡る課題が挙げられ、すべての職員が「当事者」として、何らかの影響を受ける可能性があることが分かりました。あくまで目標は敷地内禁煙ですので、職員個人の禁煙を求めるものではありませんが、病院の禁煙化によって各職員が禁煙に取り組む機会にもつながれば喜ばしいことです。プロジェクトチームを中心に、利用者への禁煙指導の方法、職員本人の禁煙の支援を計画していきたいと思います。
具体的な敷地内禁煙化までの道のりについて表1に示しました。敷地内禁煙化に先立ち、平成30年6月1日より全館建物内での喫煙ができなくなります。偶然にも毎年5月31日~6月6日は世界禁煙デーだそうです。すべての職員がそれぞれの立場で「当事者」として禁煙について考える機会になることを期待しています。
表1 敷地内禁煙への道のり
平成29年6月 | 安全衛生委員会内にワーキンググループ発足 |
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平成29年9月 | 管理会議に意見書を提出 |
平成29年11月 | 駒木野カンファレンスにて院内禁煙化について意見交換 |
平成30年1月 | 各部署の責任者を加え敷地内禁煙化プロジェクトチーム発足 |
平成30年2月 | 禁煙化計画について役員の会議で承認 |
平成30年3月 | 禁煙化計画についてポスターにて周知を開始 |
平成30年3月~ | 利用者への禁煙指導の方法についての勉強会を開始 |
平成30年4月~ | 産業医・産業保健師による職員への禁煙支援を開始 |
平成30年6月1日 | 病棟内禁煙化達成(予定) |
平成31年2月1日 | 敷地内禁煙化達成(予定) |