統合失調症
統合失調症は100人に1人の割合でかかる可能性のある、精神疾患の中ではポピュラーな病気です。これまでは有効な治療法もなく、なかなか良くならない病気と思われていましたが、新しい治療薬やリハビリテーション、福祉制度の充実などによって、今日では治療可能な病気と考えられるようになりました。早期に診断・治療を受けて適切な対応をとることで、多くの人が、その人らしい生活が送れるまでに回復することができるのです。
症状
統合失調症にみられる症状は多彩で、ひとりひとりが様々な症状を体験します。
以下に代表的な症状をあげていますが、すべての症状が現れるわけではありません。
1陽性症状
幻聴:現実にはない声が聞こえてきます。話しかけられたたり、命令されることもあります。
妄想:物事に特別な意味づけをし、事実ではないことを誤って確信します。監視されている、毒を入れられた等、ささいなことや無関係な事柄を結びつけて、事実をゆがめて解釈してしまいます。
まとまりのない会話:一貫性のある話ができなくなります。脱線したり、無関係な言葉を羅列したりするので、会話がかみ合わなくなります。自分の考えが周囲に漏れているとか、他人の考えが侵入してくると感じることがあります。
まとまりのない行動:目的に合った行動がとれなくなります。同じ動作を繰り返したり、同じ姿勢をとり続けたり、場にそぐわない行動をとったりします。他人にあやつられている、と感じることがあります。
感情の不安定さ:周囲の刺激に敏感になります。ささいなことで怒ったり、興奮したり、あるいは抑うつ的となることがあります。
2陰性症状
感情鈍麻:その人らしい情緒性や道徳性が低下したり、嬉しい・楽しい・悲しい、などの感情表現が乏しくなることがあります。
思考内容の貧困化:会話の量・質が低下します。会話が続かなかったり、内容の深みが失われ、自然な会話がうまくできなくなります。
意欲の減退:やる気が低下し、学業や仕事、家事などがうまくできなくなります。
閉じこもり:周囲の出来事に無関心となります。対人交流も乏しくなり、何もせずに過ごすことが多くなります。
注意・集中力の障害:気が散りやすく、注意・集中することが苦手になります。
原因
原因はまだはっきりとはわかっていませんが、脳の機能障害によって起こる病気であることが明らかにされつつあります。脳内で様々な情報を伝えるために働いている「神経伝達物質」のバランスの乱れが関係しているのではないか、と考えられています。
遺伝的な要因がある場合もありますが、それだけでは説明できません。この病気の原因はひとつではなく、様々な要因が関係しているのです。
診断
ご本人やご家族からお話を聞いたり、診察した時のご本人の表情や会話、しぐさなどから総合的に判断します。他の身体の病気のように採血データや画像診断などで目に見えて示すことができないので、最初からはっきりと診断がつかないことがありますし、経過とともに診断が変更されることもあります。
治療
1薬物療法
統合失調症は脳の病気であり、薬で回復する病気です。最近では治療薬の種類も増え、効果の面からも副作用の面からも、その人に適した薬物を選択することができるようになってきました。症状の安定をはかり、再発を防ぐためにも、長期にわたって薬物療法をきちんと受けることが必要となります。
2精神療法
患者様も家族も、病気に関して様々な不安や問題をかかえると思います。診察の場面ではそれらについて話し合い、統合失調症という病気や自分の症状について理解を深めることで、病気とうまく付き合いながらその人らしい生活が送れることを目指します。
3リハビリテーション
薬物療法によって激しい症状がおさまった後に開始します。入院中の場合では作業療法や簡単なレクリエーションを行います。外来ではデイケアがあります。いずれも、体力や集中力、生活リズムを取り戻したり、対人交流を通して日常生活で起こりうる問題の解決法を身につけたりストレスの対処法を学ぶことを目指しています。
最後に
糖尿病などの他の病気と同様に、統合失調症になる原因はご本人やご家族にはありませんし、きちんと治療を続けていれば回復可能な病気です。一方で、日常生活の様々なストレスやライフイベントによって再発することがあるため、薬物療法はもちろん、病気についての理解を深め、ひとりで抱え込まずに病院やご家族ともよく相談しながらうまく付き合っていくことが大切です。